先輩弁護士インタビュー1
ITやAIだけではできない法務サービスを目指す
宇原 信広
Nobuhiro Uhara
【Profile】
大学時代は応援団の吹奏楽部に所属し、学生スポーツの応援に汗を流した。出身は広島。2017年12月入所。
┃弁護士を志した理由
実ははっきりした理由が記憶にありません。中学時代に村上龍さんの『13歳のハローワーク』という本で弁護士の仕事を紹介するページをよく読んでいた記憶があり、その頃から弁護士を志したのだと思っていたのですが、当時の友人によれば小学生の頃から「弁護士になりたい」と言っていたようでした。ただ、中学時代には「将来は専門知識を活かして人を助ける仕事がしたい」と思っていたことは確かです。専門知識を活かす仕事となると、当時の私は医師か弁護士しか思い当たらず、医師の仕事といえば手術をする外科医のイメージが強かったので、手先が器用ではない自分には向かないだろうと考え、弁護士を志望したのではないかと思います。
司法修習生の時も、裁判官や検事の仕事にも興味を惹かれましたが、最終的には困っている人に直接手助けができる弁護士の仕事に最も魅力を感じました。生きている以上、誰しも法律を避けては通れません。そこにぶつかって思い悩む人々を幅広い法律知識でサポートできる。その幅の広さにも惹かれました。
そして、ロースクール時代に企業法務を扱う法律事務所で実務を学び、企業法務ならではの魅力を感じました。企業のサポートを通じて、そこで働く人々やひいては世の中全体に影響を及ぼす可能性があると実感したことが、企業法務を志した理由です。
┃学生時代の過ごし方と就職活動
音楽とスポーツが好きなことから、大学時代は応援団の吹奏楽部でパーカッションを担当。野球やアメフト、箱根駅伝など、学生スポーツの応援を中心とした生活を送っていました。
今思えば、応援団の活動と弁護士の仕事は、自らプレイヤーとして活躍するのではなく、プレイヤーが活躍できるようにサポートするという点で、共通しているように思います。応援活動を通して培った経験は、弁護士としての価値観やマインドの形成に少なからず活きています。
┃印象に残った出来事
大手総合商社の人事・総務部へ出向した3年間の経験が印象深く残っています。その企業の法務部には他の法律事務所からの出向者もいれば弁護士資格を持った人員もいましたが、人事・総務部の弁護士資格保有者は私だけ。人事関係の法律的な相談は基本的に私が責任を持って対応しなければならないため、大きなプレッシャーがありました。
もっとも、実際に企業の中に入って仕事をさせていただくと、法律事務所にいるだけではなかなか知ることのできない企業の方々の考えや動きを知ることができ、依頼者が次のアクションを取るためにはどのような情報やアドバイスが必要なのかを学ぶことができました。
出向での経験は、出向が終わって事務所に戻った後も活きており、「法的にはどうか」という点にとどまらず、さらに一歩進んで「会社としてどう対応すべきか」をより一層意識して考え、具体的なイメージをもってアドバイスができるようになったと思います。出向中は社内の関係者とコミュニケーションを取って、事実関係を聞き取り、必要なリサーチを行い、アドバイスをする、ということを1人で完結しなければならず、これも良い経験になりました。
また、当事務所では、私が経験した出向だけではなく、クライアントのニーズに応じ、定期的にクライアントのオフィスを訪問して法律相談を受けています。所内では「定期訪問」と呼んでいますが、定期訪問は若手の弁護士も多く担当していますし、事務所での法律相談でも、事前に打ち合わせたうえでクライアントへの説明を任せてもらう機会も多いです。プレッシャーはありますが、もちろんパートナーをはじめ先輩弁護士がしっかりとフォローしてくれますので、依頼者と直接やり取りをして主体的に案件を動かしていくという経験を早い段階から思い切って積むことができる環境が整っていると思います。
┃課題と展望
情報へのアクセスがしやすくなっているうえに、企業内弁護士も増えています。法律事務所として、依頼者である企業にどのようなサービスが提供できるかを、今後はますます真剣に問い続けなければなりません。
特に、当事務所で弁護士業務の効率化を担当した立場から申しますと、法律に関する業務や手続などにITを組み合わせるリーガルテックなどの最先端技術は、しっかりと追いかけておく重要性を感じています。当事務所では、リーガルテックを積極的に導入したり、事務所の知見や経験を情報として集約するための所内ポータルサイトを作ったりと様々な試みを続けていますが、ITによる業務効率化は当事務所が発展していくうえでの大きなポイントになると考えています。
そのうえで、ITやAIだけではできない法務サービスを目指して行くのが「あるべき姿」だと感じています。依頼者の相談に「法律ではこうなっています」と単なる法的アドバイスをしたところで、依頼者は「そうなのか」と思うだけですし、そもそも自ら検索して知っている可能性すらあります。依頼者は「次のアクションをどうすべきか」に悩んでいるからこそ相談しているはずです。次のアクションを決定するための判断材料を過不足なく提供し、そのうえで依頼者にとって一番良い解決を依頼者と一緒になって考える。あくまで依頼者の立場に寄り添うことが弁護士として重要であると考えます。
┃応募者の皆さんへ
当事務所では「個人の成長が事務所の発展につながり、それが依頼者への充実したサービスにつながる」と考えています。そして、「依頼者に充実したサービスを提供できるようになると、事務所としてできることの幅が広がり、それが個人の成長につながる」とも考えています。これらを1つのサイクルとして捉え、そのサイクルを広げることに全員で取り組んでいます。定期訪問のような仕組みは、大きな成長のチャンスであることは間違いありませんし、事務所全体としてバックアップしていきます。
私が担当した弁護士業務の効率化もそのサイクルを広げる一環であり、事務所のメンバー全員が、それぞれ何らかの役割を担っています。そしてそれを事務所全体の課題として、事務所メンバー全員で共有しています。こうした一体感は当事務所の大きな特長です。
私自身、当事務所で成長を実感できていますし、弁護士としての高い成長意欲をお持ちの方にとっては最適な環境ではないかと、この事務所で成長させてもらった私自身は確信しています。